〈雅楽〉の誕生 田辺尚雄が見た大東亜の響き

vendredi 5 avril 2019
par  SFEJ
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〈雅楽〉の誕生 田辺尚雄が見た大東亜の響き

鈴木聖子

〈雅楽〉とはなにか―近代日本において、「科学」を通して日本音楽の研究に終生取り組み、現代われわれが知る〈雅楽〉の概念を作り上げた人物・田辺尚雄。田辺は当時最先端の音響学や進化論などの知見にもとづいて日本の音楽を研究、「日本音階」の探究から出発し、〈雅楽〉を核とする「日本音楽史」を編み上げ、さらには遠くシルクロードのむこうに〈雅楽〉の悠久の響きを追い求めた。つくられた〈雅楽〉の真相に迫る画期的論考。

東京:春秋社
376頁
発行日:2019年1月
ISBN:978-4-393-93035-9
http://www.shunjusha.co.jp/detail/isbn/978-4-393-93035-9/

目次
はじめに
 三種類の「雅楽」
 田辺尚雄と「雅楽」
 これまでの雅楽研究
 本書の構成

序章 「雅楽」と「音楽」
 古代から近世までの「雅楽」
 楽家の明治維新――二分類の「雅楽」
 「国楽」と「雅楽」
 雅楽課の「国楽」――「雅楽音階」の誕生

第一部 「日本音階」の誕生

第一章 東京帝国大学理科大学物理学科というトポス
  音楽研究と科学
  日本音階の起源としての雅楽音階――雅楽課から音楽取調掛へ
  上原六四郎の俗楽音階研究の背景
  東京帝国大学理科大学物理学科の知
  田中正平――純正調と三絃楽のあいだで
  中村清二――中国楽律を近代音響学で裁く
  寺田寅彦――文化的アイデンティティとしての尺八の音

第二章 田辺尚雄の音階研究
  理科と文科のあいだ
  「音楽的音響学」の構築
  日本音楽研究への転向
  純正調を「東洋楽律」へ接続する
  「粋」の音階研究
  「粋」から「俗楽旋律式」へ
  なぜ「粋」の理論は消えたのか
  純正調と東洋楽律と四分音の出会い――田中と中村と寺田の遺産

第二部 進化論と「日本音楽史」

第三章 「進歩」と「国民性」のはざまで――進化論における西洋音楽と日本音楽の出会い
  田辺が愛した西洋音楽進化論――パリー『音楽芸術の発達』
  「音楽進化論」
  ウェスタールによる日本音楽礼賛と日本側の反発
  田辺の「和声」と「純正調」
  アメリカ生まれのレコードによる「西洋音楽史」
  原理としての「国民音楽」
  レコードによる「日本音楽史」の試み
  兼常清佐との出会い
  兼常「所謂日本音楽とは?」
  田辺「邦楽排斥論は成立せぬ」
  コンバリゥの音楽社会学――未開人とベートーヴェンにおける魔術

第四章 新しい「日本音楽史」の誕生――「音楽科学」と雅楽の進化論
  東儀鉄笛の雅楽史と雅楽音階
  鉄笛の「楽制改革」――「我邦最初の国楽制定」
  田辺と「楽制改革」
  「平安朝音楽」の「音楽科学」――『日本音楽講話』
  「家庭音楽」の構想
  「平安朝音楽」≠「雅楽」
  「平安朝音楽」の進化論
  SP集『平安朝音楽レコード』
  解説書『雅楽通解』
  三分類の「雅楽」の誕生

第三部 大東亜音楽科学奇譚

第五章 箜篌(くご)の楽器学――雅楽の起源を古代メソポタミア文明にたどる
  物語を語る楽器
  正倉院収蔵楽器の近代
  一九二〇年の正倉院収蔵楽器調査
  箜篌の楽器学
  調査以前に準備された「アッシリアの箜篌」

第六章 植民地の音楽フィールドワークと雅楽の起源
  「東洋音楽理論ノ科学的研究」の目的
  朝鮮の雅楽――起源としての俗楽論争
  台湾「生蕃」の音楽――日本固有の楽舞の起源
  中国・隋唐時代の雅楽の返還
  『日本音楽の研究』

第七章 東洋音楽進化論の要としての雅楽
  日本音楽史と東洋音楽史の接続
  「楽制改革」――東洋音楽と日本音楽を繋ぐための装置
  スメル人――世界最古の黄色人種
  「楽制改革」と「世界文化の総合融和」
  「書き改められた日本音楽史」

第八章 雅楽、「大東亜音楽として万邦斉しく仰ぎ見るもの」
  「東洋音楽」から「東亜音楽」へ
  「東亜共栄圏」の音楽
  「大東亜音楽時代」の「大東亜音楽科学」の夢
  世界音楽の集成としての雅楽――不在による顕在

終章 雅楽の戦後
  「明日の祖国へ」
  楽部消滅への危機感
  雅楽の「国際性」
  東京音楽学校邦楽科廃止の危機からみた雅楽の位置
  「雅楽」とは――『音楽事典』と無形文化財保護制度